FETのシミュレーション勉強その5
FETのゲート抵抗の決め方について解説する
決め方は2種類あって、電気的特性から決めるのと
ダイナミック入出力特性から決める
電気的特性から決めるのはIPF050N03Lのデータシートを見てみよう
特にゲート入力電荷量Qg=ゲートソース間電荷量Qgs+
ゲートドレイン間電荷量Qgdを見る
これを見ながら3つの手順で決める。
1.立ち上がり時間を決める
2.FETに流す電流を決める
3.ゲート抵抗を決める
立ち上がり時間から決める方法
まず立ち上がり時間をゲート入力電荷量Qgに「電荷が充電されるまでの
時間」と言い換える。
データシートの電気的特性に記載されているターンオン時間ton[ns]を
引用して「6.7ns」
FETに流す電流を決める
MOSFETに流す電流を IG [A] とすると、
IG = ゲート入力電荷量Qg / ターンオン時間ton
で求めることができます。
データシートの電気的特性にある
Qg = 31[nC]
ton = 6.7[ns]
を使うと
IG = Qg / ton = 31nC / 6.7ns = 4.63[A]
となります。
ゲート抵抗を決める
電流が決まれば、ゲート抵抗RGを決めることができます。
データシートの電気的特性にある測定条件には、VGS=10V となっているので、
オームの法則より
RG = VGS / IG = 10V / 4.63A = 2.2 Ω
となります。
これでゲート抵抗を決めることができました
電気的特性から決める際の注意点
注意すべきは、
データシートの電気的特性にある測定条件は、
『VGS=10Vのとき、Qg = 38nC 』となっていることです。
これは見方を変えると、
VGS = 10V のとき、Qg = 38nC である
→ VGS=10Vではないとき、Qg = 38nC ではない
ということです。
つまり、
VGS=10Vではないとき、Qgの値は何?
という疑問が生じます。
多くのMOSFET回路は、
データシートの『VGS=10V』という条件では使いません。
たまたま同じ条件で使用する場合もありますが、
ピッタリ10Vで使用する場合は稀だと思います。
Qgの値がわからないと、MOSFETに流す電流を IG [A] もわからないので、
ゲート抵抗RGを求めることができません。
そのようなときは、次に解説する「ダイナミック入出力特性」から、
Qgの値を決めます
ダイナミック入出力特性からゲート抵抗を決める
このグラフから、ゲート入力電荷量Qgの値を決めることができます。
例えば、
電源電圧 VDD = 6V
ゲート-ソース間電圧 VGS = 5V
のとき、ゲート入力電荷量 Qg = 15nC
となります。
Qg がわかれば、あとは電気的特性のときと同じで、
IG = Qg / ton = 15nC / 6.7ns = 2.2A
となり、
ゲート抵抗RGは、
RG = VGS / IG = 5V / 2.2A = 2.2Ω
と求めることができます。
MOSFETのゲート抵抗が必要な理由は、
ドレイン-ソース間電圧の不要な振動を減らすためです。
この振動は、立ち上がり時間が速いほど発生します。
ゲート抵抗を入れると、ゲート入力電荷量Qgに充電する時間がかかるので、
立ち上がり時間が遅くなります。
その結果、振動を減らすことができます
なので、ゲート抵抗はドレイン-ソース間電圧の不要な振動を減らす役割があります。
ちなみに、不要な振動が発生すると、放射ノイズを発生するというデメリットがありますので、
振動は減らした方が良いです。
次はFETの熱抵抗と許容損失について解説する