ryotankの備考録日記

趣味の電子工作についての備考録などなど

FETのシミュレーション勉強その4

入力特性と今回の出力特性のシミュレーション回路
とそのシミュレーション結果を比較してこんな挙動になる


ゲートしきい値電圧とは?
FETをONさせる為に、必要なゲートソース間電圧VGSの事でVGSやらVTHとかで
表される。

FETのデータシートの電気的特性に記載されている。

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ゲートしきい値電圧_NchFET例

電気的特性(Ta=25℃)を示す測定条件を見ると
VDS=VGS、 ID=250μA

すなわちこれは、周囲温度Ta=25℃においてドレイン-ソース間電圧VDS=20Vを
印加している状態で、ドレイン電流IDを250μA流す為に
必要なゲートしきい値電圧VTHが1.0(最小)~2.2V(最大)である事を示している

補足:しきい値電圧VTHは英語では
Threshold Voltage」と書きます

FETのID-VGS特性で必要なゲートソース間電圧VGSを決める方法とは

 ここでドレイン電流IDを250μA以上流したい場合は、
ゲートソース間電圧VGSは何V必要になるのか

 これは、FETのデータシートの伝達特性(ID-VGS特性)に書いてある

例えば、5Aのドレイン電流IDを流したい場合
25℃においてゲートソース間電圧VGSは約2.5V必要になる事が分かる

次に、この時のオン抵抗を求めると・・・
ゲートソース間電圧VGSが約2.5Vの時
「VDS=20V」で「ID=5A」となるため
Ron=VDS/ID=20[V]/5[A]=4[Ω]と計算できたが
5mΩなのでまだオン抵抗が高い状態。

次に、ここで、オン抵抗RONを低くなるためには、
ゲートソース間電圧VGSは何V必要なの?


FETのデータシートの『VDS-VGS特性』から導出します。

上図の右はInfineon製のIPF050N03Lのデータシートの『VDS-VGS特性』を示しています。

なお、『VDS-VGS特性』ではなく、『RON-VGS特性』が
記載されているデータシートもありますが、
Infineon製のIPF050N03Lは『RON-VGS特性性』が記載されているため、
『RON-VGS特性』からオン抵抗を導出します。

『RON-VGS特性』を見ると、ゲートソース間電圧VGSが5V付近になると、
「ID=5A」、「VDS=0.4V」となります。この時のオン抵抗RONは、
RON=VDS/ID=5[V]5[A]=1[Ω]

となり、ゲートソース間電圧VGSを5V印加すると、
オン抵抗が低くなることが分かります。

そのため、スイッチング用途で使用する場合には、
ゲートソース間電圧VGSを5V以上印加する必要があります。

なお、ゲートソース間電圧VGSを高くする場合、ゲートソース間電圧VGS
加わるサージを加味して、
絶対最大定格のVGSSを超えないように設計をする

IPF050N03LのデータシートにはVGSS(絶対最大定格)の記載がないので
分からない・・・

補足:MOSFETのドライブ損失を減らすために、ゲートソース間電圧VGS
低く設定すると、
必要なドレイン電流IDを流せないだけでなく、オン抵抗RONの増大によって、
MOSFETが温度上昇し、破壊に至る可能性もあります

MOSFETの『ゲートしきい値電圧Vth』は温度によって変化する

ゲートしきい値電圧Vthは負の温度特性(一般的には-5mV~-7mV/℃)持っており、
温度が上昇すると、ゲートしきい値電圧Vthは減少します

Infineon製のIPF050N03Lのデータシートの『Vth-TC特性)』を示しています。

上図の『Vth-TC特性)』を見ると、「VDS=10V、ID=1mA」となっており
電気的特性欄の測定条件と一致しています。そのため、TC=25℃の箇所を見ると、
ゲートしきい値電圧Vthが1.3V(最小)~2.5V(最大)にあることが分かります。

また、上図より、温度TCが高くなると、ゲートしきい値電圧Vthが
低下することが分かります。つまり、温度TCが高いほど、
ゲートしきい値電Vthが低下するため、より低いゲートソース間電圧VGS
ドレイン電流IDを多く流せるということになる。

補足:温度によって変化するため、MOSFETの駆動回路を設計する際には、
データシートに記載されているゲートしきい値電圧Vthの温度特性を
確認して、外部ノイズ等によって、誤動作しないように駆動回路を
設計する必要がある。

FETは奥が深いな~

次回は、FETのゲート抵抗の決め方について解説する